1.2 製品のメリット

High Availability Extensionでは最大16台のLinuxサーバを可用性の高いクラスタ(HAクラスタ)に構成し、クラスタ内の任意のサーバにリソースをダイナミックに切り替えたり、移動することができます。サーバ障害発生時のリソースの自動マイグレーションの設定ができます。また、ハードウェアのトラブルシューティングやワークロードのバランスをとるために、リソースを手動で移動することもできます。

High Availability Extensionは一般的なコンポーネントを使用して、高度な可用性を実現します。アプリケーションと操作をクラスタに統合することによって、運用コストを削減できます。またHigh Availability Extensionではクラスタ全体を一元管理し、変化するワークロード要件に応じてリソースを調整することもできます(手動でのクラスタの負荷分散)。3ノード以上でクラスタを構成すると、複数のノードがホットスペアを共用できて無駄がありません。

その他にも重要な利点として、予測できないサービス停止を削減したり、ソフトウェアおよびハードウェアの保守やアップグレードのための計画的なサービス停止を削減できる点が挙げられます。

次に、クラスタによるメリットについて説明します。

共有ディスクサブシステムにRAID を導入することによって、共有ディスクの耐障害性を強化できます。

次のシナリオは、High Availability Extensionの利点を紹介するものです。

クラスタシナリオ例

サーバ3台でクラスタが構成され、それぞれのサーバにWebサーバをインストールしたと仮定します。クラスタ内の各サーバが、2つのWebサイトをホストしています。各Webサイトのすべてのデータ、グラフィックス、Webページコンテンツは、クラスタ内の各サーバに接続された、共有ディスクサブシステムに保存されています。次の図は、このクラスタの構成を示しています。

Figure 1-1 3サーバクラスタ

通常のクラスタ操作では、クラスタ内の各サーバが他のサーバと常に交信し、すべての登録済みリソースを定期的にポーリングして、障害を検出します。

Webサーバ1でハードウェアまたはソフトウェアの障害が発生したため、このサーバを利用してインターネットアクセス、電子メール、および情報収集を行っているユーザの接続が切断されたとします。次の図は、Webサーバ1で障害が発生した場合のリソースの移動を表したものです。

Figure 1-2 1台のサーバに障害が発生した後の3サーバクラスタ

WebサイトAがWebサーバ2に、WebサイトBがWebサーバ3に移動します。IPアドレスと証明書もWebサーバ2とWebサーバ3に移動します。

クラスタを設定するときに、それぞれのWebサーバがホストしているWebサイトについて、障害発生時の移動先を指定します。先に説明した例では、WebサイトAの移動先としてWebサーバ2が、WebサイトBの移動先としてWebサーバ3が指定されています。このようにして、Webサーバ1によって処理されていたワークロードが、残りのクラスタメンバーに均等に分散され、可用性を維持できます。

Webサーバ1に障害が発生すると、High Availability Extensionソフトウェアは次のような処理を行います。

この例では、フェールオーバープロセスが迅速に実行され、ユーザはWebサイトの情報へのアクセスを数秒程度で回復できます。多くの場合、再度ログインする必要はありません。

ここで、Webサーバ1で発生した問題が解決し、通常に操作できる状態に戻ったと仮定します。WebサイトAおよびWebサイトBは、Webサーバ1に自動的にフェールバック(復帰)することも、そのままの状態を維持することもできます。これは、リソースの設定方法によって決まります。Webサーバ1へのマイグレーションは多少のダウンタイムを伴うため、High Availability Extensionではサービス中断がほとんど、またはまったく発生しないタイミングまでマイグレーションを延期することもできます。いずれの場合でも利点と欠点があります。

High Availability Extensionはリソースマイグレーション機能も提供しています。アプリケーション、Webサイトなどをシステム管理の必要性に応じて、クラスタ内の他のサーバに移動することができます。

たとえば、WebサイトAまたはWebサイトBをWebサーバ1からクラスタ内の他のサーバに手動で移動することができます。これは、Webサーバ1のアップグレードや定期メンテナンスを実施する場合、また、Webサイトのパフォーマンスやアクセスを向上させる場合に有効な機能です。