10.7 SUSE Linux Enterprise Serverでの特殊機能

CUPSの多くの機能は、SUSE Linux Enterprise Serverで使用できるように調整されています。ここでは、最も重要な変更点について説明します。

10.7.1 CUPSとファイアウォール

デフォルトのSUSE Linux Enterprise Serverインストールを実行した後、SuSEfirewall2はアクティブになり、ネットワークインタフェースは着信トラフィックをブロックする外部ゾーンに設定されます。これらのデフォルト設定は、CUPSを使用するときに調整します。SUSEfirewall2設定の詳細については、8.4項 「SuSEfirewall2」を参照してください。

CUPSクライアント

通常、CUPSクライアントはファイアウォール内部の信頼されるネットワーク環境の通常のワークステージョンで実行されます。この場合、ネットワークインタフェースを内部ゾーンに設定し、ワークステーションにネットワーク内部から到達できるようにすることを推奨します。

CUPSサーバ

CUPSサーバがファイアウォールで保護された信頼済みネットワーク環境の一部の場合、ネットワークインタフェースはファイアウォールの内部ゾーンに設定します。CUPS設定で特別なファイアウォールルールおよびセキュア設定により保護する場合を除いて、信頼できないネットワーク環境でCUPSサーバを設定することはお勧めできません。

10.7.2 各種パッケージ内のPPDファイル

YaSTのプリンタ設定機能は、/usr/share/cups/model/内に記述されたPPDファイルのみを使用して、CUPS用のキューをセットアップします。プリンタモデルに適したPPDファイルを決定するために、YaSTはハードウェア検出の際に判断されたベンダおよびモデルを、システムの/usr/share/cups/model/内で使用可能なすべてのPPDファイル内にあるベンダおよびモデルと比較します。この目的で、YaSTのプリンタ設定機能は、PPDファイルから抽出したベンダおよびモデルの情報に基づいて、データベースを生成します。プリンタを選択した場合、そのベンダおよびモデルに対応するPPDファイルを受け取ることになります。

PPDファイルのみを使用し、他の情報ソースを使用しない設定には、/usr/share/cups/model/内のPPDファイルを自由に変更できるという利点があります。YaSTのプリンタ設定機能は、変更結果を認識し、ベンダおよびモデルからなるデータベースを再生成します。たとえば、PostScriptプリンタのみを使用している場合、通常はcups-driversパッケージ内にあるFoomatic PPDファイルや、gutenprintパッケージ内にあるGutenprint PPDファイルを必要としません。代わりに、使用中のPostScriptプリンタ用のPPDファイルを/usr/share/cups/model/へ直接コピーし(それらがまだmanufacturer-PPDsパッケージ内に存在していない場合)、使用中のプリンタに合わせて最適な設定を行うこともできます。

cupsパッケージ内のCUPS PPDファイル

cupsパッケージ内にある基本PPDファイルは、PostScript Level 1およびLevel 2プリンタに適応したFoomatic PPDファイルによって補足されます。

  • /usr/share/cups/model/Postscript-level1.ppd.gz

  • /usr/share/cups/model/Postscript-level2.ppd.gz

cups-driversパッケージ内のPPDファイル

通常、Foomaticプリンタフィルタのfoomatic-ripは、PostScript非対応プリンタ用のGhostscriptと組み合わせて使用されます。適切なFoomatic PPDファイルには、*NickName: ... Foomatic/Ghostscript driverおよび*cupsFilter: ... foomatic-ripのエントリがあります。これらのPPDファイルは、cups-driversパッケージ内にあります。

YaSTでは一般に、manufacturer-PPDファイルが優先されます。ただし、適切なmanufacturer-PPDファイルが存在しない場合は、エントリ*NickName: ... Foomatic ... (recommended)のFoomatic PPDファイルが選択されます。

gutenprintパッケージのGutenprint PPDファイル

多くのPostScript非対応プリンタでは、foomatic-ripの代わりに、Gutenprint(以前のGIMP-Print)から取得したCUPSフィルタrastertogutenprintを使用できます。このフィルタと、適切なGutenprint PPDファイルは、gutenprintパッケージ内に用意されています。Gutenprint PPD ファイルは /usr/share/cups/model/gutenprint/ 内に配置されていて、そのファイル内にエントリ*NickName: ... CUPS+Gutenprintおよび*cupsFilter: ... rastertogutenprintがあります。

manufacturer-PPDsパッケージ内にあるプリンタメーカからのPPDファイル

manufacturer-PPDsパッケージには、十分自由なライセンスに基づいてプリンタメーカから提供されたPPDファイルが含まれています。PostScriptプリンタは、プリンタメーカの適切なPPDファイルを使用して設定するのが妥当です。 このファイルを使用すると、そのPostScriptプリンタの機能すべてを活用できるためからです。manufacturer-PPDsパッケージから得られたPPDファイルが優先されます。モデル名が一致しない場合、YaSTではmanufacturer-PPDパッケージからPPDファイルを使用できません。これは、Funprinter 12xxシリーズなど、類似モデルについて1つのPPDファイルのみがmanufacturer-PPDパッケージに含まれる場合に該当します。この場合は、YaSTで対応するPPDファイルを手動で選択します。