Novell(R) eDirectoryTM には、レプリカ作成による障害対策機能が組み込まれています。eDirectoryツリーに属するサーバに障害があっても、別のサーバがサービスを続行できます。この意味でレプリカ作成機能は、最も重要な保護機能と位置づけられています。
ただし1台だけのサーバで運用している環境では、レプリカ作成は不可能です。また、レプリカを作成していても、完全に復元するのは困難な場合もあります。ハードウェア障害など、機器が破損したときや、火事や水害で何台ものサーバが動かなくなってしまった場合などです。各サーバのeDirectoryをバックアップしておけば、ネットワークの耐障害性を高めることになります。
eDirectory 8.7には、Backup eMToolという新しいバックアップ/復元ユーティリティが付属するようになりました。これを使用すると、サーバ単位でeDirectoryデータベースをバックアップすることができます。これには次のような利点があります。
稼動中でもバックアップ可能。 eDirectoryデータベースを停止することなく、そのままで完全なバックアップを取ることできます。
高い拡張性。 数千万から数億単位のオブジェクトを保持したeDirectoryデータベースを持つサーバでもバックアップ可能です。バックアップの処理速度は主としてI/Oチャネルの帯域幅で決まります。
レプリカ作成機能とDSMASTERサーバを組み合わせて運用していれば、ツリー全体の復元も容易。 DSMASTERサーバを設定していない場合でも、かなりの程度まで復元できます。「DSMASTERサーバによる災害対策」を参照してください。
リモート操作が可能。 バックアップ/復元処理のほとんどは、iManagerを使って、Webブラウザ画面から実行可能です。ファイアウォールの内側からでも外側からでも構いません。高度な処理は、コマンドラインから実行するJavaクライアントである、eMBox Clientを使い、リモート操作で実行できます。ファイアウォール越しにでも、あるいはVPN経由でも操作できます。
関連ファイルもバックアップ可能。 データベース以外の関連ファイルも組にしてバックアップできます。NICIセキュリティファイル、ストリームファイル、インクルードファイルで指定したファイル(autoexec.ncfなど)が対象になります。
サーバの停止直前の状態にeDirectoryを復元可能。 ただしロールフォワードログを継続的に保存していることが条件です。「ロールフォワードログを使用する」を参照してください。
ハードウェアのアップグレードを単純化。 eDirectoryデータベースのコールドバックアップを取り、新しいサーバに復元して、サーバの識別情報を簡単に新ハードウェアに移行できます。RAMのアップグレードなど、機器構成を変える際の安全措置としても有効です。「ハードウェアのアップグレードやサーバの交換」を参照してください。
無人でのバックアップが可能。 バッチファイルを作成して、eMBox Clientを使用して無人でバックアップを実行できます。
新しいeDirectoryバックアップツールであるBackup eMToolsには、個々のサーバ単位でデータベースおよび関連ファイルのバックアップを取り、復元するために必要な機能がすべて揃っています。個々のオブジェクトやツリーの一部を単位としてバックアップ/復元することはできません。
システムバックアップ機能と組み合わせれば、eDirectoryバックアップファイルをテープに保存して安全を期すことができます。
この章では、次のトピックについて説明します。