ハードウェアのアップグレードやサーバの交換

このセクションでは、ハードウェアをアップグレードまたは交換する際に、特定のサーバ上のeDirectoryを移す、または保護するための情報について説明します。ここでの説明は、Novell eDirectoryのバックアップと復元の情報に基づいています。

Backup eDirectory Management Toolを使用すれば、次の操作を行うためのeDirectory情報を作成できます。


サーバを交換しないでハードウェアまたは記憶デバイスを計画的にアップグレードする

記憶デバイスやRAMなどのハードウェアのアップグレードを計画している場合、Backup eMtoolを使用してeDirectoryおよびファイルシステムのコールドバックアップを行います。これにより、サーバのeDirectory識別情報とファイルシステムデータが保護されます。このバックアップには、次の利点があります。

eDirectoryのコールドバックアップを実行する場合、オプションを使用してサーバ上のeDirectoryをロックし、使用不可にする必要があります。これにより、バックアップ後のデータ変更を防げます。このサーバと通信している他のサーバからは、このサーバは停止しているように見えます。通常サーバに送信されるeDirectory情報は、そのサーバと再び通信できるようになるまで、ツリー内の別のサーバに保存されます。保存された情報は、サーバがオンライン状態に戻ったときに、サーバを同期するために使用されます。

注:  eDirectoryツリー内の他のサーバは、このサーバがすぐにオンライン状態に戻ると期待しているため、アップグレードをすばやく完了させ、できるだけ早くサーバ上のeDirectoryデータベースをオープンする必要があります。

ハードウェアのアップグレードを計画的に実行するには、次の手順に従います。

  1. アップグレードによりサーバに問題が発生するかもしれないと心配なら、必要に応じて、使用する別のコンピュータを準備するとよいでしょう。

    1. サーバ交換の準備」を参照してください。

  2. eDirectoryデータベースのコールドバックアップを実行し、その後でデータベースをクローズし、ロックしたままにしておくには、eMBoxクライアントコマンドを次のように使用します。NICIを使用する場合は、-eオプションを使用してセキュリティファイルもバックアップします。

    backup -f バックアップファイルの名前とパス
    -l ログファイルの名前とパス -e -t -c -o -d

    NICIを使用する場合、-eスイッチを使用してNICIファイルをバックアップします。(eMBoxクライアントとスイッチの使用についての詳細は、eMBoxクライアントによる手動バックアップおよびeMBoxクライアントによる手動バックアップを参照してください)。

    これで、eDirectoryデータベースはロックされました。手順を完了するまでは、サーバ上で新たなデータ変更が実行されないように、データベースをロックしたままにしておく必要があります。

    サーバが使用できない時間を最小限に抑えるために、以降の手順をすばやく完了させます。

  3. お好みのバックアップツールを使用して、ファイルシステムをバックアップします。(NetWareの場合、SMSTMが使用できます)。

    データベースをバックアップした後で、ファイルシステムのバックアップを行うのは重要です。これにより、eDirectoryバックアップファイルが、他のファイルシステムと一緒にテープに保存されます。

  4. サーバを停止させ、ハードウェアを交換します。

  5. ハードウェアを交換した後で、ハードウェア変更の種類に応じた以下の手順を実行します。

    ハードウェア変更の種類... 実行する手順

    記憶デバイスに変更がない場合

    サーバを起動し、データベースのロック解除を行います。

    記憶デバイスの交換を行ったが、eDirectoryが格納されたディスクパーティション/ボリュームに変更はない場合

    1. サーバとeDirectoryを起動します。
    2. 交換した記憶デバイス上にあったディスクパーティション/ボリュームのファイルシステムだけを復元します。
    3. eDirectoryデータベースのロックを解除します。

    NetWare以外のオペレーティングシステム環境のeDirectoryが格納された記憶デバイスを交換した

    1. 必要に応じてオペレーティングシステムをインストールします。
    2. 記憶デバイスの変更により影響を受けたディスクパーティション上に、ファイルシステムを復元します。
    3. 新しい記憶デバイス上の、新しい一時的なツリー内に、eDirectoryをインストールします。
    4. バックアップからeDirectoryを復元します(元のツリー内に配置されます)。このとき、復元した後でeDirectoryがクローズされ、ロックされたままになるようにオプションを指定します。次のようなコマンドを使用します。
      restore -r -f バックアップファイルの名前とパス
      -l ログファイルの名前とパス -e

      NICIファイルをバックアップしてあった場合は、-eオプションを使用します。インクルードファイルに列挙されたファイルをバックアップしてあった場合は、-uオプションを追加します。
    5. eDirectoryデータベースのロックを解除します。
    6. NICIセキュリティファイルを復元した場合は、復元を完了した後で、サーバを再起動してセキュリティシステムを再初期化します。
    7. サーバが通常どおりに応答するか、チェックします。

      ConsoleOne(R)を使用して、サーバとその同期をチェックします。ログインスクリプトと印刷が正しく動作することを確認します。
    8. このサーバでロールフォワードログを使用していた場合、復元を完了した後で、ロールフォワードログ設定を再作成します。ロールフォワードログを有効にしてから、改めてフルバックアップも取る必要があります。復元した後は、設定がデフォルトの状態にリセットされます。つまり、ロールフォワードログがオフになっています。フルバックアップが改めて必要となるのは、スケジュールに従って次に無人でのフルバックアップが取られるまでに、再び障害が起こる可能性があるためです。

    NetWare上のeDirectoryとSYS:ボリュームが含まれた記憶デバイスを交換した

    NetWare上のファイルシステムデータを復元する場合、ファイルシステム権の保持に関わる問題があることを認識しておく必要があります。eDirectoryを復元した後で、ファイルシステムを復元する必要があります。また、NetWareのファイルシステムデータを復元する際のアクセス権の保存で説明している追加の手順も必要になる場合があります。

    1. 新しい記憶デバイスにNetWareとeDirectoryをインストールし、一時的な新しいツリー内に新しいSYS:ボリュームを作成します。
    2. 新しいSYS:ボリューム上に、バックアップテープからコピーしたeDirectoryバックアップファイルを配置します。
    3. バックアップからeDirectoryを復元します(元のツリー内に配置されます)。このとき、復元した後でeDirectoryがクローズされ、ロックされたままになるようにオプションを指定します。次のようなコマンドを使用します。
      restore -r -f バックアップファイルの名前とパス
      -l ログファイルの名前とパス -e

      NICIファイルをバックアップしてあった場合は、-eオプションを使用します。インクルードファイルに列挙されたファイルをバックアップしてあった場合は、-uオプションを追加します。
    4. 記憶デバイスの交換によって影響を受けたすべてのボリュームのファイルシステムを復元します。
    5. eDirectoryデータベースのロックを解除します。
    6. NICIセキュリティファイルを復元した場合は、復元を完了した後で、サーバを再起動してセキュリティシステムを再初期化します。
    7. サーバが通常どおりに応答するか、チェックます。

      iMonitorを使用して、サーバとその同期をチェックします。ログインスクリプトと印刷が正しく動作することを確認します。
    8. このサーバでロールフォワードログを使用していた場合、復元を完了した後で、ロールフォワードログ設定を再作成します。ロールフォワードログを有効にしてから、改めてフルバックアップも取る必要があります。復元した後は、設定がデフォルトの状態にリセットされます。つまり、ロールフォワードログがオフになっています。フルバックアップが改めて必要となるのは、スケジュールに従って次に無人でのフルバックアップが取られるまでに、再び障害が起こる可能性があるためです。

サーバが通常どおりに応答しない場合、次にいずれかの方法によって回復する必要がある場合があります。


サーバの計画的な交換

次に示す手順で、サーバのeDirectoryアイデンティティとファイルシステムデータを別のコンピュータ上に移すことで、実際にサーバを置き換えます。ここでは、古いサーバをサーバAとし、それに置き換わるサーバをサーバBとしています。

Backup eMToolを使用してeDirectoryのコールドバックアップ(データベースをクローズした状態でのバックアップ)を実行し、さらにお好みのツールを使用してファイルシステムのバックアップをして、サーバの交換に備えます。このバックアップ情報を用いれば、復元プロセスを使用して、新しいコンピュータ上にサーバを再構築できます。

eDirectoryのコールドバックアップを実行する場合、オプションを使用してサーバA上のeDirectoryをロックし、使用不可にする必要があります。これにより、バックアップ後のデータ変更を防げます。このサーバと通信している他のサーバからは、このサーバは停止しているように見えます。通常サーバに送信されるeDirectory情報は、そのサーバと再び通信できるようになるまで、ツリー内の別のサーバに保存されます。保存された情報は、新しいコンピュータであるサーバB上で、サーバがオンライン状態に戻ったときに同期するために使用されます。

注:  eDirectoryツリー内の他のサーバは、このサーバがすぐにオンライン状態に戻ることを期待しているため、できるだけ早く交換してサーバにeDirectory情報を復元する必要があります。

サーバを置き換えるための手順の概要を次に示します。

  1. 交換する際のサーバAの停止時間を短くするには、1. サーバ交換の準備で説明しているようにサーバBにオペレーティングシステムをインストールするなどして、交換前にできるだけサーバBの準備を整えておきます。
  2. 2. eDirectoryのバックアップを作成する の説明に従って、サーバAのeDirectoryとシステムファイルをバックアップします。
  3. 3. サーバ交換におけるeDirectory情報の復元の説明に従って、サーバBに情報を移します。


1. サーバ交換の準備

次に示すサーバAとサーバBのチェックリストを使用して、サーバAを交換する準備ができているかを確認します。開始する前にサーバBの準備をしておけば、あるコンピュータから別のコンピュータへ転送する間のサーバの停止時間を減らすことができます。


サーバAの準備

  • サーバAに最新のバージョンのオペレーティングシステムがインストールされていることを確認します。
  • Treeパーティションのマスタを保持しているサーバでDSRepairを実行し、さらに時刻同期を実行して、サーバAのツリーが正常に機能していることを確認します。
  • サーバAのデータベースでDSRepairを実行します。サーバAが完全に同期されていることを確認します。


サーバBの準備

  • 最新バージョンのオペレーティングシステムをインストールします。このオペレーティングシステムは、サーバAのものと同じである必要があります。
  • サーバBを新しい一時的なツリーに配置し、eDirectoryをインストールします。

    (3. サーバ交換におけるeDirectory情報の復元の過程でeDirectoryを復元するには、サーバBをサーバAが配置されていた元のツリー内に配置します)。

  • (NetWareの場合のみ)サーバの交換でファイルシステムデータを復元する場合、ファイルシステム権の保持に関わる問題があることを認識しておく必要があります。ファイルシステムの復元の前に、eDirectoryの復元を計画する必要があります。また、NetWareのファイルシステムデータを復元する際のアクセス権の保存で説明している追加の手順も必要になる場合があります。

続いて、次のセクション2. eDirectoryのバックアップを作成する .の手順を実行します。


2. eDirectoryのバックアップを作成する

サーバ交換の前に、eDirectoryのバックアップを作成する必要があります。1. サーバ交換の準備が完了した後はeMBox Clientを使用し、バックアップの後でデータベースを使用不可にしてロックする詳細オプションを設定して、サーバA上のeDirectoryデータベースのコールドバックアップを実行します。

eDirectoryのコールドバックアップ(データベースがクローズ中のバックアップ)を作成し、その後でデータベースをクローズのままにしておくには、次の手順に従います。

  1. 1. サーバ交換の準備が完了していることを確認します。

  2. 次に示すようなeMBoxクライアントのコマンドで、-c、-o、および-dスイッチを使用して、サーバA上のeDirectoryデータベースのコールドバックアップを実行し、完了した後はデータベースをクローズしてロックしたままにします。

    backup -f バックアップファイルの名前とパス
    -l ログファイルの名前とパス -e -t -c -o -d

    NICIを使用する場合、-eスイッチを使用してNICIファイルをバックアップします。(eMBoxクライアントとスイッチの使用についての詳細は、eMBoxクライアントによる手動バックアップおよびeMBoxクライアントによる手動バックアップを参照してください)。

    サーバAのeDirectoryデータベースがロックされます。データベースをサーバB上に復元しツリー内に戻すまでは、サーバ上で新たなデータ変更が実行されないように、データベースをロックしたままにしておく必要があります。

    サーバアップグレードまたはサーバ交換の残りの手順を迅速に完了させ、サーバが使用できない時間を最小限に抑えます。

  3. サーバAのファイルシステムのフルバックアップを作成します。(NetWareでは、SMSが使用できます)。

    データベースをバックアップした後で、ファイルシステムのバックアップを行うのは重要です。これにより、eDirectoryバックアップファイルが、残りのファイルシステムと一緒にテープに保存されます。

    SMSの使用方法の詳細については、『Management Services管理ガイド』を参照してください。

  4. サーバA上のeDirectoryデータベースをロックし、サーバAをネットワークから外します。

    続いて3. サーバ交換におけるeDirectory情報の復元の手順を実行します。


3. サーバ交換におけるeDirectory情報の復元

サーバAのeDirectory識別情報およびファイルシステムをサーバBに移すには、次の手順に従います。

  1. 1. サーバ交換の準備および2. eDirectoryのバックアップを作成する が完了していることを確認します。

  2. サーバBが起動し、eDirectoryが実行されていることを確認します。

  3. 復元により、サーバAのeDirectory識別情報およびファイルシステムを次の手順でサーバBに移します。

    1. サーバAのeDirectoryコールドバックアップファイルをサーバBにコピーします。

      サードパーティのファイル圧縮ツールは圧縮性能が良いので、そのようなツールを使用した場合、バックアップファイルはとても小さくなることがあります。これにより、ファイルのコピーを早くできる場合があります。

    2. 複製したeDirectoryのバックアップファイルを使用して、サーバAのeDirectoryデータベースをサーバB上に復元します。それには、eMBoxコマンドラインクライアントで、次のようなコマンドを使用します。

      restore -r -f バックアップファイルの名前とパス
      -l ログファイルの名前とパス -e

      NICIを使用する場合、-eスイッチを使用してNICIファイルを復元します。インクルードファイルに列挙されたファイルをバックアップしてあった場合は、-uオプションを追加します。(eMBoxクライアントとスイッチの使用についての詳細は、eMBoxクライアントによるバックアップファイルの復元作業およびeMBoxクライアントによる手動バックアップを参照してください)。

      復元にはロールフォワードログを含める必要はありません。なぜなら、コールドバックアップを実行し、その後でデータベースをクローズしてあるからです。データベースではどのようなトランザクションも実行されていません。データベースはクローズされ、バックアップ以降にはロールフォワードログは作成されていません。

      重要:  NetWareでは、ファイルシステムを復元する前にeDirectoryを復元することが特に重要です。これにより、トラスティ割り当ておよび権利が、ファイルシステムデータの復元の後で保持されます。詳細については、「NetWareのファイルシステムデータを復元する際のアクセス権の保存」を参照してください。

    3. バックアップされたサーバAのファイルシステムデータをサーバBに移します。

  4. (NetWareの場合のみ)autoexec.ncfで、サーバBのIPアドレスとサーバ名を、サーバAのものにリネームします。

  5. NICIを使用している場合は、サーバを再起動してNICIを再初期化し、復元されたNICIセキュリティファイルが使用されるようにします。

  6. eDirectoryデータベースのロックを解除します。

  7. 復元が完了した後は、サーバBがサーバAの識別情報を正しく引き継ぎ、通常どおりに応答しているかチェックします。ConsoleOneを使用してサーバとその同期をチェックします。ログインスクリプト、印刷、およびNICIセキュリティが正常に機能することを確認します。

    サーバの応答が通常どおりなら、サーバの交換は完了です。これで、サーバAからeDirectoryをアンインストールしてeDirectory識別情報を削除し、このコンピュータを別の目的に使用できます。サーバAをネットワークに戻すのは、eDirectoryを削除した後にしてください。そうしないと、eDirectoryの同期でネットワークが混乱してしまいます。なぜなら、サーバAとサーバBの同じ識別情報により、競合が発生するためです。

  8. (特定条件における処理)このサーバでロールフォワードログを使用していた場合、復元を完了した後で、ロールフォワードログ設定を作成し直します。ロールフォワードログを有効にしてから、改めてフルバックアップも取る必要があります。

    復元した後は、設定がデフォルトの状態にリセットされます。つまり、ロールフォワードログがオフになっています。フルバックアップが改めて必要となるのは、スケジュールに従って次に無人でのフルバックアップが取られるまでに、再び障害が起こる可能性があるためです。

サーバBが正常に動作せず、サーバAの識別情報およびファイルシステムを直ちに使用できるようにする必要がある場合は、次を実行します。

  1. サーバBのネットワークケーブルを抜くか、またはサーバを停止します。

  2. サーバAをネットワークに再接続し、起動してから、eDirectoryデータベースをオープンします。

    DSRepairの実行を要求するシステムメッセージを無視します。

  3. サーバBからeDirectoryを削除し、再度アップグレードを試みます。