1.5 新機能

SUSE Linux Enterprise Server 11では、クラスタスタックがHeartbeatからOpenAISに変更しました。OpenAISは業界標準のAPIとしてService Availability Forumが発行しているApplication Interface Specification (AIS)を実装しています。SUSE Linux Enterprise Server 10のクラスタリソースマネージャも残っていますが、大幅に機能が強化され、OpenAISに移植され、現在はPacemakerと呼ばれています。

SUSE® Linux Enterprise Server 10 SP2から へのHigh Availabilityコンポーネントにおける変更点の詳細は、次のセクションを参照してください。

1.5.1 新しく追加された機能

マイグレーションのしきい値と失敗タイムアウト

High Availability Extensionにはマイグレーションのしきい値と失敗タイムアウトというコンセプトが新たに追加されました。新しいノードへのマイグレートを行う基準となるリソースの失敗回数を定義できます。デフォルトでは、管理者がリソースの失敗回数を手動でリセットするまで、ノードは失敗したリソースを実行できなくなります。ただし、リソースのfailure-timeoutオプションを設定することで、リソースの失敗回数を失効させることができます。

リソースと操作のデフォルト

リソースオプションと操作にグローバルなデフォルトを設定できるようになりました。

オフラインの設定変更のサポート

設定を個別に更新する前に、一連の変更による効果をプレビューで確認したほうがよい場合があります。構成のシャドーコピーを作成して、実行前にコマンドラインインタフェースで編集し、アクティブなクラスタ構成を個別に変更できるようになりました。

ルール、オプション、操作セットの再利用

ルール、インスタンス属性、メタ属性、および操作セットは1度定義しておけば、複数の場所で参照できます。

CIB内の特定操作に対するXPath式の使用

CIBでXPathベースのcreatemodifydelete操作が使用できるようになりました。詳細は、cibadminのヘルプテキストを参照してください。

多次元のコロケーションと順序の制約

一連のコロケーションリソースを作成する場合、これまではリソースグループを定義するか(設計を必ずしも正確に表現していない場合があった)、個別の制約として各関係を定義するかのいずれかが可能でした。その結果、リソースや組み合わせの数が増加するにつれて、制約も膨大なものになることもありました。今回、resource_setsの定義によって別な形式でコロケーションの制約を指定できるようになりました。

クラスタ化されていないマシンからのCIBへの接続

Pacemakerがマシンにインストールされていれば、マシン自体がクラスタに属していない場合でもクラスタに接続できます。

反復アクションを既知の回数トリガ

デフォルトでは、リソースの開始時刻に対して相対的に反復アクションがスケジュールされますが、これが適切ではない場合がありました。操作を相対的に実施する日付/時刻を指定するため、操作の間隔開始時刻を設定します。クラスタはこの時刻を使用して、開始時刻+(間隔 * N)で操作を開始するように、適切な開始遅延を計算します。

1.5.2 変更された機能

リソースとクラスタオプションに関する命名規則

すべてのリソースとクラスタオプションには、アンダースコア(_)の代わりにダッシュ(-)を使用するようになりました。たとえばmaster_maxメタオプションは、master-maxという名前に変更されました。

master_slaveリソースの名前変更

master_slaveリソースは、masterという名前に変更されました。マスタリソースは、2つのモードのいずれかで実行可能な特殊なクローンタイプです。

属性のコンテナタグ

attributesコンテナタグは削除されました。

前提条件の操作フィールド

pre-req操作フィールドは、requiresという名前に変更されました。

操作間隔

すべての操作に間隔を指定する必要があります。開始および停止操作の場合、間隔は0(ゼロ)に設定する必要があります。

コロケーション属性と順序の制約

コロケーション属性および順序の制約の名前をわかりやすく変更しました。

障害によるマイグレーションのためのクラスタオプション

resource-failure-stickinessクラスタオプションは、migration-thresholdクラスタオプションに替わりました。も参照してください。

コマンドラインツールの引数

コマンドラインツールの引数が一定になりました。も参照してください。

XMLの検証と解析

クラスタ構成はXMLで作成されます。従来のDTD(文書型定義)の代わりに、より強力なRELAX NGスキーマを使用して、構造とコンテンツのパターンを定義するようになりました。libxml2はパーサとして使用します。

idフィールド

idフィールドは次の制限を持つXML IDになりました。

  • IDにコロンを含めることはできません。

  • IDは数字から開始できません。

  • IDはグローバルに固有なものでなければなりません(そのタグで固有なだけではなく)。

他のオブジェクトの参照

フィールドの中にはIDREFフィールドがあります(リソースを参照する制約のフィールドなど)。したがって、有効な構成にするために既存のリソースまたはオブジェクトを参照しなければなりません。そのため、別な場所で参照されているオブジェクトの削除は失敗します。

1.5.3 削除された機能

リソースメタオプションの設定

リソースメタオプションを最上位の属性として設定できなくなりました。代わりにメタ属性を使用してください。

グローバルデフォルトの設定

リソースと操作デフォルトはcrm_configから読み込まれなくなりました。