このセクションでは、サポートされるハードウェア、MicroCodeのレベル、ソフトウェアなどのシステム要件について基本的な情報を提供します。また、異なるインストールの種類、初回インストールのIPL実行、およびIOCDSについても説明します。
このセクションでは、SUSE Linux Enterprise ServerがサポートするIBM System zのハードウェアを一覧表示します。次に、ご使用のIBM System zシステムで使用するMicroCodeのレベル(MCL)について説明します。このレベルは、インストールでは非常に重要です。このセクションの末尾では、インストールする追加ソフトウェアとインストールに使用する追加ソフトウェアについて説明します。
SUSE Linux Enterprise Serverは、次のプラットフォームで正常に動作することが実証されています。
IBM Series z9 (z9-EC) 2094
IBM Series z9 (z9-BC) 2096
IBM Series z10 (z10-EC) 2097
IBM Series z10 (z10-BC) 2098
インストール方法が異なれば、インストール時のメモリ要件も異なります。インストールの完了後に、システム管理者はメモリを必要なサイズに減らすことができます。SUSEによる推奨要件は次のとおりです。
768MB |
z/VMの下でインストールする場合 |
1 GB |
LPARの下でインストールする場合 |
メモ: リモートインストールソースのメモリ要件
NFS、FTP、またはSMBインストールソースからインストールする場合、あるいはVNCが使用される場合はいつでも、512MB以上のメモリが必要です。この要件を満たさない場合インストールは失敗する可能性があります。また、メモリ要件は、z/VMゲストに可視的なデバイス数や、LPARイメージに影響を受けることに留意してください。アクセス可能なデバイスが数百あるインストールの場合は、さらに多くのメモリを要することがあります。
ディスク要件は、インストール処理に大きく依存します。一般的に、システムが適切に動作するために、インストールソフトウェア自身が必要とする以上のディスク領域が必要です。選択肢ごとの最小要件は、次のとおりです。
2.6 GB |
デフォルトのインストール |
3.6 GB+ |
推奨(グラフィックデスクトップ、開発パッケージ、javaの場合) |
ユーザのSUSE Linux Enterprise Serverシステムと通信するには、ネットワーク接続が必要です。次のような1つ以上の接続またはネットワークカードを使用できます。
OSA Express Ethernet (Fast EthernetおよびGigabit Ethernetを含む)
HiperSocketまたはゲストLAN
10GBE、VSWITCH
次のインタフェースも引き続き含まれますが、サポートされなくなりました。
CTC (または仮想CTC)
ESCON
IUCV用のIPネットワークインタフェース
LPARインストールの場合は、
オプションを利用した方が、インストールカーネルおよびinitrd (初期RAMディスク)をIPLするよりも効果的です。このオプションが利用できず、またシステムのインストールにz/VM fを利用できない場合は、tapeiplカーネル、parmfile、およびinitrdを使用してチャネル接続テープからIPL処理する必要があります。そのため、テープユニット(たとえば、3480、3490、または3590など)へのアクセスが必要となります。このSUSE Linux Enterprise Serverのリリースは、IBM developerWorks (http://www.ibm.com/developerworks/linux/linux390/development_recommended.html)より提供された2008年5月のcodestreamに基づいています。Webサイトに記載された制限および要件は、このマニュアル内で特に明示されていない限り、このSUSE Linux Enterprise Serverのリリースにも適用されます。利用可能な最高のサービスレベルを常に使用することをお勧めします。最小要件については、IBMサポートにお問い合わせください。
新しいMicroCodeレベルをインストールする前に、VM APARの有効化が必要になる可能性があるため、インストールの順序については、IBMサポートにお問い合わせください。
非LinuxベースのNFSまたはFTP経由でSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする場合は、NFSまたはFTPサーバのソフトウェアで問題が発生する可能性があります。特にWindowsの標準FTPサーバではエラーが発生する可能性があるので、一般には、これらのマシンへのインストールはSMB経由が推奨されます。
SUSE Linux Enterprise Serverインストールシステムに接続するには、次のいずれかの方法を使用する必要があります。
SSHは標準のUnixツールのため、どのUnixおよびLinuxシステムに含まれています。Windowsの場合は、Puttyという名前のSSHクライアントがあります。無償で使用でき、http://www.chiark.greenend.org.uk/~sgtatham/putty/から利用できます。
Linuxの場合は、vncviewerというVNCクライアントが、tightvncパッケージの一部として、SUSE Linux Enterprise Serverに収められています。Windows向けにもtightvncを提供しています。http://www.tightvnc.com/からダウンロードしてください。または、VNC JavaクライアントおよびJava対応のWebブラウザを使用します。
目的に合ったLinuxまたはUnixワークステーション上でのXサーバ実装を探します。WindowsおよびMacintosh用として、多くの商用X Window System環境があります。その中には、ダウンロード可能な無償の試用バージョンもあります。MochaSoft提供のMocha X Serverのトライアルバージョンをhttp://www.mochasoft.dk/freeware/x11.htmから取得できます。
ヒント: 追加情報
IBM System zにSUSE Linux Enterprise Serverをインストールする場合は、その前に、SUSE Linux Enterprise ServerのDVD 1の最高レベルのディレクトリにあるREADMEを参照してください。このファイルは、ここで示されているドキュメントを補完するものです。
このセクションでは、IBM System z対応のSUSE Linux Enterprise Serverで可能な各種インストールの概要を示します。基本的には、次の2つのタイプが使用されます。
論理パーティション(LPAR)を使用したSUSE Linux Enterprise Serverのインストール
z/VM内でのゲストオペレーティングシステムとしてのSUSE Linux Enterprise Serverのインストール
インストールのモード(LPARまたはVM)によって、インストールプロセスを開始し、インストールしたシステムをIPL処理する方法は異なります。
IBM System z用のSUSE Linux Enterprise Serverを、別個の論理パーティション(LPAR)にインストールする場合は、SUSE Linux Enterprise Serverでシステムの物理メモリの特別な部分を使用できるようにします。また、SUSE Linux Enterprise Serverが使用するプロセッサの数も特定します。このモードでは、IBM System zシステム上で同時に異なるオペレーティングシステムを実行できます。
IBM System z用のSUSE Linux Enterprise Serverをz/VM内で実行する場合は、SUSE Linux Enterprise Serverがz/VM内のゲストシステムになります。このモードの利点は、z/VMからSUSE Linux Enterprise Serverを完全に制御できるということです。カーネルの開発やカーネルベースのデバッグには、非常に役立ちます。Linuxゲストとの間で、ハードウェアを簡単に追加したり取り外したりできます。追加&SUSE Linux Enterprise Serverゲストを簡単に作成できます。また、数百のLinuxインスタンスを同時に実行することができます。
このセクションでは、初めてのインストールの際に行うIPL処理に必要な情報を提供します。インストールのタイプに応じて、異なるオプションを使用する必要があります。チャネル接続テープ、VMリーダ、およびCD ROMまたはサーバからのロードのオプションについて説明します。ネットワーク経由で行うソフトウェアパッケージのインストールでは、IPLメディアは不要です。
チャネル接続テープからのIPL実行は、テープライブラリに接続されたすべてのシステム上で有効です。唯一の前提条件として、インストールするときのLPARはテープユニットにアクセスできる必要があります(または、z/VMの実行が許可されている)。そのためには、IOCDS内のIODEVICE文が属性SHAREDまたはPART=<LPARName>を持つ必要があります。
VMリーダからIPLを実行するには、最初に必要なファイルをリーダに転送します。そうすることによって、複数のIPLが簡単に実行できるようになります。これがz/VM上で推奨される方法です。管理しやすいように、IPLに必要なファイルとスクリプトを含んだミニディスクが属すユーザlinuxmntを作成することをお勧めします。このミニディスクには、Linuxゲストが読み取り専用アクセスします。
LPARにIPL実行する場合は、SEまたはHMCのCD/DVD ROMデバイスから直接ロードできます。また、IBM System zファイル用のSUSE Linux Enterprise Serverを保持するサーバから、FTP経由でIPLを実行することもできます。このボタンは、セクション 4.1, 一般情報および要件を参照してください)。
ボタンの近くにあります(最新のMCLにアップグレードした場合は、この機能はHMCから実行できます。これを実行するには、HMCデスクトップ上の
にある アイコンにアクセスします。次に、 にアクセスします。システムイメージを選択し、 を開始します。[Single Object Operations]サービス要素の
にアクセスします。CD ROMまたはサーバからのロードを実行するLPARを選択し、選択したLPARの を開始します。[アクション]メニューから を開始します。続いて表示されるウィンドウで、要求される情報を入力します。SCSI DVDからIPLを実行するには、DVDドライブに接続されたFCPアダプタにアクセスする必要があります。SCSI ドライブのWWPNやLUNなどの値が必要です。詳細については、FCP接続SCSI DVDからのIPLを参照してください。
このセクションでは、IOCDSについて知っておくべき情報、および複数のLPARでネットワークカードまたはDASDを共有するために設定をカスタマイズする方法について説明します。IOCDSでは、IBM System zに接続されるデバイスのchpidとタイプを定義します。リソースは専用にすることも、または複数のLPARで共有することも可能です。
警告: デバイスの共有(DASD)
複数のLPARで書き込み可能なDASDを共有しないでください。データを失う可能性があります。IBM System zへのSUSE Linux Enterprise Serverのセットアップを計画している場合は、必要なリソースの定義を事前に検討してください。
次の例は、DASDを特定のLPARに割り当てる方法を示しています。このLPARはLPAR1と呼ばれます。
例 4-1 DASDを1つのLPAR専用として設定
CHPID PATH=FD,TYPE=DSD,SHARED CNTLUNIT CUNUMBR=FD00,PATH=FD,UNITADD=((00,256)),UNIT=3990-2 IODEVICE ADDRESS=(FD03,1),CUNUMBR=FD00,UNIT=3390,PART=LPAR1
複数のLPARでDASDを共有するには、IOCDS定義からPART=LPAR1部分を削除します。この方法は、高い可用性、または複数のLPAR間での読み込み専用データの共有という点で有用になる場合があります。
Linuxシステムの中には、複数のLPARまたはz/VMゲスト間で、ネットワークデバイスを共有できるものがあります。共有することで、Linuxシステムに設定する必要があるネットワークデバイスの数を減らすことができます。一方、1つの接続に失敗した場合に備えて、1つのLinuxシステムに複数のネットワークデバイスを提供することも考えられます。
OSA-Expressなどのネットワークカードは、異なる2つのモードで使用できます。この2つのモードは、QDIOモードおよび非QDIOモードと呼ばれます。これらのモードは、IOCDSで TYPE 文を使用して定義してください。QDIOモードは非QDIOモードよりも高速ですが、非QDIOモードがデバイスアドレスを2つ使用するのに対して、3つ使用します。IBM System zへのLinux環境のセットアップを計画している場合は、デバイスアドレス数が限られていることを考慮する必要があります。
例 4-2 z9上での複数のLPAR間のOSA Expressカードの共有(非qdio)
CHPID PATH=(FE),SHARED,PARTITION=((LPAR1,LPAR2)),TYPE=OSE CNTLUNIT CUNUMBR=FE00,PATH=(FE),UNIT=OSA IODEVICE ADDRESS=(FE00,016),CUNUMBR=(FE00),UNIT=OSA IODEVICE ADDRESS=(FEFE,001),CUNUMBR=(FE00),UNIT=OSAD
例 4-3 z9上での複数のLPAR間のOSA Expressカードの共有(qdio)
CHPID PATH=(FE),SHARED,PARTITION=((LPAR1,LPAR2)),TYPE=OSD CNTLUNIT CUNUMBER=FE00,PATH=(FE),UNIT=OSA IODEVICE ADDRESS=(FE00,016),CUNUMBR=(FE00),UNIT=OSA IODEVICE ADDRESS=(FEFE,001),CUNUMBR=(FE00),UNIT=OSAD