14.2 インストールソースを保持するサーバのセットアップ

SUSE Linux Enterprise Server用のネットワークインストールソースとして使用するコンピュータで動作しているオペレーティングシステムに応じて、サーバ設定のためのいくつかのオプションがあります。インストールサーバを設定する最も簡単な方法は、SUSE Linux Enterprise Server 、11 またはSUSE Linux 9.3以降でYaSTを使うことです。

ヒント: Linuxの導入のために、Microsoft Windowsマシンをインストールサーバとして用いることもできます。詳細については、セクション 14.2.5, SMBインストールソースの管理を参照してください。

14.2.1 YaSTを使ったインストールサーバのセットアップ

YaSTは、ネットワークインストールソースを作成するためのグラフィカルなツールを提供しています。HTTP、FTP、およびNFSネットワークインストールサーバをサポートしています。

  1. インストールサーバにするコンピュータにrootとしてログインします。

  2. [YaST] > [その他] > [インストールサーバ]の順に選択します。

  3. サーバのタイプを選択します(HTTP、FTP、またはNFS)選択したサーバサービスは、システムの起動時ごとに自動的に開始されます。選択したタイプのサービスがシステム上ですでに動作していて、サーバ用に手動で設定する場合には、[Do Not Configure Any Network Services]をオンにして、サーバサービスの自動設定を無効にします。どちらの場合でも、サーバ上のインストールデータを保管するディレクトリを設定してください。

  4. 必要なサーバタイプを設定します。このステップは、サーバサービスの自動設定と関係しています。自動設定を無効にした場合にはスキップされます。

    インストールデータを置くFTPまたはHTTPサーバのルートディレクトリのエイリアスを定義してください。後ほど、インストールソースはftp://Server-IP/Alias/Name (FTP)、またはhttp://Server-IP/Alias/Name (HTTP)に置かれます。Nameはインストールソースの名前を表すもので、次のステップで定義します。前のステップでNFSを選択した場合には、ワイルドカードとエクスポートオプションを指定します。NFSサーバは、nfs://Server-IP/Nameでアクセスできます。NFSとエクスポートについての詳細は、第25章 NFS共有ファイルシステムを参照してください。

    ヒント: ファイアウォールの設定

    サーバシステムのファイアウォール設定が、HTTP、NFS、およびFTPポートのトラフィックを許可していることを確認します。これらのポートのトラフィックが禁止されている場合は、YaSTファイアウォールモジュールを起動して、該当するポートを開きます。

  5. インストールソースを設定します。インストール用メディアをコピーする前に、インストールソースの名前を定義します(容易に覚えられる、製品とバージョンの略が望ましいでしょう)。YaSTでは、インストールCDのコピーの代わりに、メディアのISOイメージを使うことができます。そうする場合には、対応するチェックボックスをオンにして、ISOファイルをローカルに保管するディレクトリのパスを指定します。このインストールサーバを使って配布する製品によっては、他のアドオンCDやサービスパックCDが必要なこともあります。このような場合は、他のインストールソースとして追加する必要があります。ネットワーク内のインストールサーバについて知らせるためにOpenSLPを使う場合には、適切なオプションをオンにします。

    ヒント: ネットワークセットアップでサポートされている場合には、OpenSLPを使ってインストールソースを知らせることを考慮してみてください。そうすれば、すべてのターゲットマシンでネットワークインストールパスを入力しなくてもよくなります。SLPブートオプションでブートされたターゲットシステムは、他の設定を行わなくても、ネットワークインストールソースを見つけます。このオプションについての詳細は、セクション 14.4, ターゲットシステムをインストールのためにブートするを参照してください。

  6. インストールデータをアップロードします。インストールサーバの設定で最も時間がかかるステップは、実際のインストールCDのコピーです。メディアをYaSTが要求する順序に挿入し、コピーの手順が終わるまで待ってください。ソースのコピーがすべて完了したら、既存の情報ソースの概要に戻り、[完了]を選択して設定を閉じます。

    インストールサーバは完全に設定されて、使用する準備ができました。これはシステムが起動するたびに、自動的に開始します。それ以上の操作は必要ありません。必要なのは、YaSTの最初のステップで選択したネットワークサービスの自動設定を無効にしていた場合に、サービスを手動で正しく設定し、開始することだけです。

インストールソースを無効にするには、該当するインストールソースを選択して、[削除]を選択します。システムからインストールデータが削除されます。ネットワークサービスを削除する場合は、適切なYaSTモジュールを使用します。

インストールサーバから複数の製品バージョンの製品のインストールデータを提供する場合には、YaSTのインストールサーバモジュールを起動し、既存のインストールソースの概要で[追加]を選択して、新しいインストールソースを設定します。

14.2.2 NFSインストールソースの手動セットアップ

インストール用のNFSソースのセットアップは、基本的に2つのステップで行えます。最初のステップでは、インストールデータを保持するディレクトリ構造を作成して、インストールメディアをその構造にコピーします。2番目のステップでは、インストールデータを保持しているディレクトリをネットワークにエクスポートします。

インストールデータを保持するディレクトリを作成するには、以下の手順に従います。

  1. rootとしてログインします。

  2. 後ほどインストールデータを保持するディレクトリを作成し、このディレクトリに移動します。たとえば、次のようにします。

    mkdir install/product/productversion
    cd install/product/productversion

    productは製品名の略語、productversionは製品名とバージョンを含む文字列で置き換えます。

  3. メディアキットに含まれているCDごとに、以下のコマンドを実行します。

    1. インストールCDの内容全体を、インストールサーバのディレクトリにコピーします。

      cp -a /media/path_to_your_CD-ROM_drive .

      path_to_your_CD-ROM_driveは、CDまたはDVDドライブを指定するための実際のパスで置き換えてください。これは、使用しているシステムのドライブのタイプに応じて、cdromcdrecorderdvd、またはdvdrecorderになります。

    2. ディレクトリの名前をCDの番号に合わせて変更します。

      mv path_to_your_CD-ROM_drive CDx

      xは、CDの実際の番号で置き換えてください。

SUSE Linux Enterprise Serverでは、YaSTを使ってNFS経由でインストールソースをエクスポートできます。次の手順に従います。

  1. rootとしてログインします。

  2. [YaST] > [ネットワークサービス] > [NFSサーバ]の順に選択します。

  3. [開始]および[ファイアウォール内でポートを開く]をオンにして、[次へ]をクリックします。

  4. [Add Directory]を選択して、インストールソースのあるディレクトリ(この場合、[productversion])に移動します。

  5. [Add Host]をクリックして、インストールデータのエクスポート先になるコンピュータのホスト名を入力します。ここでホスト名を指定する代わりに、ワイルドカード、ネットワークアドレス、または単にネットワークのドメイン名を使用することもできます。適切なエクスポートオプションを入力するか、デフォルトのままにします。デフォルトでもほとんどのセットアップでは正しく動作します。NFS共有のエクスポートで私用される構文の詳細についてはexportsの「man」ページを参照してください。

  6. [完了]をクリックします。SUSE Linux Enterprise Serverのインストールソースを保持しているNFSサーバが自動的に起動し、ブートプロセスに統合されます。

YaSTのNFSサーバモジュールを使うかわりに、NFSを使用してインストールソースを手動でエクスポートする場合には、次の手順に従います。

  1. rootとしてログインします。

  2. /etc/exportsファイルを開いて、次の行を入力します。

    /productversion *(ro,root_squash,sync)

    これにより、ディレクトリ/productversionは、ネットワークに属している任意のホスト、またはこのサーバに接続している任意のホストにエクスポートされます。このサーバへのアクセスを制限するには、一般的なワイルドカード*の代わりにネットマスクまたはドメイン名を使用してください。詳細は、exportのmanページを参照してください。設定ファイルを保存して終了します。

  3. NFSサービスを、システムブート時に起動するサーバのリストに追加するには、次のコマンドを実行します。

    insserv /etc/init.d/nfsserver
    insserv /etc/init.d/portmap
  4. rcnfsserver startを実行してNFSサーバを開始します。後ほど、NFSサーバの設定を変更することが必要になった場合には、設定ファイルを修正して、rcnfsserver restartコマンドでNFSデーモンを再起動してください。

OpenSLPを使用してNFSサーバについてアナウンスし、ネットワーク内のすべてのクライアントにそのアドレスを知らせます。

  1. rootとしてログインします。

  2. /etc/slp.reg.d/ディレクトリに入ります。

  3. 以下の行を含む、install.suse.nfs.regという名前の設定ファイルを作成します。

    
    
    
    # Register the NFS Installation Server
    service:install.suse:nfs://$HOSTNAME/path_to_instsource/CD1,en,65535 
    description=NFS Installation Source

    path_to_instsourceは、サーバ上のインストールソースの、実際のパスで置き換えます。

  4. この設定ファイルを保存して、rcslpd startコマンドでOpenSLPデーモンを起動します。

OpenSLPについての詳細は、/usr/share/doc/packages/openslp/のパッケージのドキュメント、または第19章 ネットワーク上のSLPサービスを参照してください。NFSの詳細については、第25章 NFS共有ファイルシステムを参照してください。

14.2.3 FTPインストールソースの手動セットアップ

FTPインストールソースの作成は、NFSインストールソースの場合と非常によく似ています。FTPインストールソースも、OpenSLPを使用してネットワーク上にアナウンスすることができます。

  1. セクション 14.2.2, NFSインストールソースの手動セットアップで説明されているように、インストールソースを保持するディレクトリを作成します。

  2. インストールディレクトリの内容を配布するためのFTPサーバを設定します。

    1. rootとしてログインし、YaSTパッケージマネージャを使ってパッケージvsftpdをインストールします。

    2. FTPサーバのルートディレクトリに入ります。

      cd /srv/ftp
    3. FTPのルートディレクトリに、インストールソースを保持するサブディレクトリを作成します。

      mkdir instsource 

      instsourceは製品名で置き換えてください。

    4. 既存のインストールリポジトリの内容を、FTPサーバのルート環境にマウントします。

      mount --bind path_to_instsource /srv/ftp/instsource

      path_to_instsourceinstsourceは、セットアップに適した値で置き換えてください。この変更を永続的にする必要がある場合には、/etc/fstabに追加します。

    5. vsftpdと入力して、vsftpdを開始します。

  3. ネットワークのセットアップでサポートされている場合には、インストールソースをOpenSLPでアナウンスします。

    1. 以下の行を含むinstall.suse.ftp.regという名前の設定ファイルを、/etc/slp.reg.d/に作成します。

      
      
      # Register the FTP Installation Server
      service:install.suse:ftp://$HOSTNAME/srv/ftp/instsource/CD1,en,65535 
      description=FTP Installation Source

      instsourceは、サーバ上のインストールソースディレクトリの実際の名前で置き換えてください。service:の行は、連続した行として入力する必要があります。

    2. この設定ファイルを保存して、rcslpd startコマンドでOpenSLPデーモンを起動します。

ヒント: YaSTによるFTPサーバの設定

FTPインストールサーバを手動でなく、YaSTで設定する場合は、第28章 YaSTによるFTPサーバの設定で、YaST FTPサーバモジュールの使用方法を参照してください。

14.2.4 HTTPインストールソースの手動セットアップ

HTTPインストールソースの作成は、NFSインストールソースの場合と非常によく似ています。HTTPインストールソースも、OpenSLPを使用してネットワーク上にアナウンスすることができます。

  1. セクション 14.2.2, NFSインストールソースの手動セットアップで説明されているように、インストールソースを保持するディレクトリを作成します。

  2. インストールディレクトリの内容を配布するためのHTTPサーバを設定します。

    1. 27.1.2項 「インストール」の説明に従って、WebサーバのApacheをインストールします。

    2. HTTPサーバのルートディレクトリ(/srv/www/htdocs)に入り、インストールソースを保持するサブディレクトリを作成します。

      mkdir instsource 
             

      instsourceは製品名で置き換えてください。

    3. インストールソースの場所からWebサーバのルートディレクリ(/srv/www/htdocs)への、シンボリックリンクを作成します。

      ln -s /path_instsource /srv/www/htdocs/instsource
    4. HTTPサーバの設定ファイル(/etc/apache2/default-server.conf)を変更して、シンボリックリンクをたどるようにします。以下のように変更します。

      Options None

      方法

      Options Indexes FollowSymLinks
    5. rcapache2 reloadを使用してHTTPサーバ設定を再ロードします。

  3. ネットワークのセットアップでサポートされている場合には、インストールソースをOpenSLPでアナウンスします。

    1. 以下の行を含むinstall.suse.http.regという名前の設定ファイルを、/etc/slp.reg.d/に作成します。

      
      
      # Register the HTTP Installation Server
      service:install.suse:http://$HOSTNAME/srv/www/htdocs/instsource/CD1/,en,65535 
      description=HTTP Installation Source

      instsourceは、サーバ上のインストールソースの、実際のパスに置き換えます。service:の行は、連続した行として入力する必要があります。

    2. この設定ファイルを保存して、rcslpd restartコマンドでOpenSLPデーモンを起動します。

14.2.5 SMBインストールソースの管理

SMBを使用すれば、Linuxコンピュータがなくても、Microsoft Windowsサーバからインストールソースをインポートして、Linuxの導入を開始することができます。

SUSE Linux Enterprise Serverのインストールソースが保管されるエクスポートされたWindows Shareを設定するには、次の手順に従います。

  1. Windowsマシンにログインします。

  2. エクスプローラを起動して、インストールツリー全体を保持する新しいフォルダを作成し、INSTALLのような名前を付けます。

  3. この共有を、Windowsのドキュメントで説明されている方法に従ってエクスポートします。

  4. この共有を入力し、「product」という名前のサブフォルダを作成します。productは、実際の製品名と置き換えます。

  5. INSTALL/productフォルダで、各CDまたはDVDを個別のフォルダにコピーします(例:CD1およびCD2)。

SMBマウントの共有をインストールソースとして使用するには、次の手順に従います。

  1. インストールターゲットをブートします。

  2. [インストール]を選択します。

  3. インストールソースの選択のために、F4キーを押します。

  4. SMBを選択し、Windowsマシンの名前またはIPアドレス、共有名(この例ではINSTALL/product/CD1)、ユーザ名、パスワードを入力します。

    <Enter>キーを押すと、YaSTが起動して、インストールを実行します。

14.2.6 サーバ上のインストールメディアのISOイメージの使用

サーバのディレクトリに手作業で物理メディアをコピーする代わりに、インストールサーバにインストールメディアのISOイメージをマウントして、それをインストールソースとして使用することもできます。メディアコピーの代わりに、ISOイメージを使用するHTTP、NFS、またはFTPサーバを設定するには、以下の手順に従ってください。

  1. ISOイメージをダウンロードして、それをインストールサーバとして使用するコンピュータに保存します。

  2. rootとしてログインします。

  3. セクション 14.2.2, NFSインストールソースの手動セットアップセクション 14.2.3, FTPインストールソースの手動セットアップ、またはセクション 14.2.4, HTTPインストールソースの手動セットアップの説明に従って、インストールデータの場所を選択、作成します。

  4. 各CDまたはDVD用のサブディレクトリを作成します。

  5. 各ISOイメージを最終的な場所にマウントし、パックを解除するには、次のコマンドを実行します。

    mount -o loop path_to_iso path_to_instsource/product/mediumx

    path_to_isoには、ISOイメージのローカルコピーへのパスを、path_to_instsourceにはサーバのソースディレクトリを、productには製品名を、mediumxには使用メディアの種類(CDまたはDVD)と数を指定します。

  6. 前のステップを繰り返して、製品に必要なすべてのISOイメージをマウントします。

  7. セクション 14.2.2, NFSインストールソースの手動セットアップセクション 14.2.3, FTPインストールソースの手動セットアップ、またはセクション 14.2.4, HTTPインストールソースの手動セットアップの説明に従って、インストールサーバを開始します。

ブート時にISOイメージを自動的にマウントするには、それぞれのマウントエントリを/etc/fstabに追加します。前の例のエントリは、次のようになります。

path_to_iso path_to_instsource/product
    medium auto loop