MIBツールの理解

次の節では、MIB CompilerとMIB Browserを使用してSNMPデバイスを管理する場合に必要なタスクについて説明します。


MIBについて

デバイスを管理するには、デバイスがサポートするMIBのコピー(複数の場合もあり)を取得する必要があります。MIBは、厳格な形式で記述されたASCII形式のテキストファイルであり、特定のデバイスクラスで利用することができる管理情報を説明します。たとえば、メーカXのルータXYZを所有しており、このルータの管理にNovell ZENworks Server Managementを使用することを検討している場合、メーカXからXYZルータに関するMIBを取得する必要があります。Novell ZENworks Server Managementでは、多数の標準MIBとベンダ固有MIBを用意しています。これらのMIBは、MIB Server Poolフォルダ内のMIB Poolフォルダに存在します。Novell ZENworks Server Managementはデフォルトで、これらの中から最も一般的に適用できるMIBをコンパイルします。

新しいMIBをコンパイルする場合、そのMIBをMIB Server Poolフォルダ内のMIB Poolフォルダに保存する必要があります。コンソールユーザは、MIB Server Poolフォルダ内のMIB Poolフォルダにあるファイルを選択したり、削除したりすることができます。MIB Compilerは、MIB Server Poolフォルダ内のMIB Poolフォルダに示されているファイルをコンパイルします。


SNMP MIB Compilerの理解

MIB Compilerは次の項目を実行します。

次の図は、MIB CompilerがMIBファイルの情報をどのようにしてNovell ZENworks Server Managementデータベースに組み込むのかを示しています。


MIBファイルの情報は、MIB CompilerによりNovell ZENworks Server Managementデータベースに組み込まれます。

Novell ZENworks Server Managementをインストールする際、MIB Compilerを使って事前にコンパイルされるMIBファイルもインストールされます。管理しようとしているすべてのSNMPノードのMIBをNovell ZENworks Server Managementを使ってコンパイルする必要があります。サードパーティのMIBを統合することもできます。サードパーティベンダのMIBファイル、またはNovell ZENworks Server Managementと共にインストールされなかったMIBファイルを取得する場合は、MIB Compilerを使ってファイルをコンパイルする必要があります。


MIB Compilerによる役割ベースのサービスの使用

Novell ZENworks Server Managementが提供する役割ベースのサービスを使って、ネットワーク上のユーザにさまざま役割を割り当てることができます。自分の役割にEnable MIB Compilerタスクが割り当てられた場合、MIB Compilerを使用できます。

Novell ZENworks Server Managementの役割ベースの管理に関する詳細については、役割ベース管理を参照してください。


SNMP MIB Browserの理解

MIB Browserにより、ネットワーク上のSNMP対応デバイスを管理することができます。

このツールを使用するには、SNMPを理解し、MIBの構造を正しく把握している必要があります。MIB Browserを使用して、ターゲットノードにあるMIBオブジェクトの値を設定することにより、ネットワーク上のノードを管理することができます。

SNMP MIBの構造についてよくご存知の場合は、MIB Browserを使って、SNMP対応ノードからデータを取得することができます。

MIB Browserにより、ネットワーク上のSNMPエージェントを介して、UDP(User Datagram Protocol)やIP(Internet Protocol)を使ったデータのやりとりをデバイスとの間で実行することができます。SNMPコマンドの結果は、[MIB Browser]ウィンドウに表示されます。

SNMPエージェントプログラムは、特定のネットワークデバイスに関する管理データにアクセスし、こうしたデータに対するSNMP Managerのリクエストに応答します。NetWare(R) Management Agentソフトウェアは、NetWareサーバに設定されるSNMPエージェントの一例です。SNMPエージェントは、ネットワーク上の各対応デバイスに設定します。

SNMP対応ノードから取得したデータは多数のNovell ZENworks Server Managementウィンドウに表示されますが、取得するデータの種類の指定にMIB Browserの機能を使用することもできます。MIB Browserを使用することにより、Novell ZENworks Server Managementウィンドウに表示されないSNMPデータを取得することもできます。

MIB Browserは、コンパイルされたMIBを取得し、ツリー形式でオブジェクトを表示します。MIB Browserを使用して、ツリー内を移動し、選択したオブジェクトの定義を検索することもできます。Novell ConsoleOne(R)とSNMP対応ノード間の通信に使用されるコミュニティ文字列を設定して、デバイスを管理することができます。

次の図は、MIB Browserの機能について説明します。


MIB Browserの機能

MIB Browserには次の機能があります。

MIB Browserに関する詳細については、MIB Browserの使用を参照してください。


MIB Browserによる役割ベースのサービスの使用

Novell ZENworks Server Managementが提供する役割ベースのサービスを使って、ネットワーク上のユーザにさまざま役割を割り当てることができます。自分の役割にEnable MIB Browserタスクが割り当てられた場合、MIB Browserを使用できます。

Novell ZENworks Server Managementが提供する役割ベースの管理に関する詳細については、役割ベース管理を参照してください。


MIBツールを使ったデバイスの管理

Novell ZENworks Server Managementを使って、ネットワーク上の任意のSNMP対応デバイスを管理することができます。特に、次の項目を実行できます。

MIB Browserを使用してデバイスの管理を行う前に、次の作業を実行する必要があります。

  1. 必要なMIBを取得します。
  2. 必要に応じて、トラップの注釈を追加します。
  3. MIB Compilerを使用してMIBを追加または削除します。
  4. MIB Compilerを実行して、Novell ZENworks Server ManagementにMIBをコンパイルします。


ASN.1およびSNMP V2のサポート

MIB Compilerは、ASN.1およびSNMP V1、V2構文で記述されたすべてのMIBファイルをサポートします。MIB Compilerでは、ASN.1構文に厳密な意味で準拠していない構文もサポートしています。


トラップの定義

一部のSNMP MIBは、ネットワークで異常なイベントが発生したときにデバイスがNovell ConsoleOneに送信できるトラップを定義しています。トラップを含むMIBをコンパイルすると、こうしたトラップに関する情報はNovell ZENworks Server Managementアラームデータベースに追加されます。Novell ZENworks Server Managementはトラップを受信すると、アラームデータベース内の情報を取得して使用し、アラーム概要文字列を生成して、アラームの種類、アラームの重要度、影響を受けるデバイスの状態、およびその他の詳細情報を判別します。

MIBファイルのトラップ定義に注釈を追加すると、より詳しいアラーム情報をNovell ZENworks Server Managementで表示することができます。こうした注釈はコメントとしてトラップ定義に追加されるため、このMIBをサードパーティMIBコンパイラを使ってコンパイルすることができます。

すべてのNovell(R) MIBには注釈が追加されます。他のMIBのトラップに注釈を付けないことを選択した場合、Novell ZENworks Server Managementはアラームを表示しますが、表示される情報量は少なくなります。SNMP MIBは、TRAP-TYPEマクロを使用してトラップを定義します。

この節では、次のトピックについて説明します。


トラップ定義のキーワード

次の表は、トラップの定義について説明しています。

キーワード 説明

TRAP-TYPE

dupIpxNetAddr

トラップの名前を指定します。たとえば、dupIpxNetAddrはIPXネットワークアドレスが重複していることを表します。

ENTERPRISE

Novell NetWare-GA-alert-mib

ベンダのツリー内のノードのOBJECT識別子を含みます。トラップを一意に識別するトラップ番号(DESCRIPTION句の後に付けられる::=8)と一緒に使用されます。

VARIABLES

(osName, osLoc, tiTrapTime, tiEventValue, tiEventSeverity, tiServer)

イベントの追加情報を提供するためにトラップのパラメータとして渡されるMIBオブジェクトを、特定の順序で定義します。

たとえばosNameは、トラップを送信しているサーバ名を指定するテキスト文字列です。osLOCは、サーバの位置を指定するテキスト文字列です。tiTrapTimeは、イベントが発生した時刻を指定する整数です。

DESCRIPTION

"Two servers use the same IPX Internet address."

トラップのセマンティクスを説明するテキスト文字列を提供します。

Trap_number

: :=8

トラップを定義します。


テンプレートデータベース

MIB Compilerは、MIBファイルのトラップ定義をアラームテンプレートデータベースに適用します。エージェントのすべてのトラップがデータベースに保存されます。


トラップ注釈のキーワード

次の表は、トラップに注釈を追加する場合に使用できるキーワードについて説明しています。

キーワード 説明

--#TYPE

アラームのショートネーム。この名前には、最大40文字を使用できます。この注釈が存在しない場合、SNMPトラップ名が使用されます。すべてのトラップには一意の種類を設定する必要があります。

--#SUMMARY

プレースホルダを含むアラームの説明、およびアラームで渡される実際のパラメータの書式情報。

詳細については、SUMMARY文字列の書式設定を参照してください。

この注釈が存在しない場合、アラーム概要文字列には、各SNMPパラメータ名の後にその値が表示されます。

--#ARGUMENTS

SUMMARY文字列に代入するパラメータのリスト。パラメータは、リストに表示された順序で代入されます。リストの各要素は、VARIABLES句のパラメータのインデックス(ゼロベース)です。

--#SEVERITY

トラップに割り当てられるデフォルトの重要度。次のいずれかになります。

  • INFORMATIONAL
  • MINOR
  • MAJOR
  • CRITICAL
  • UNKNOWN

この注釈が存在しない場合、重要度はUNKNOWNとして表示されます。

--#TIMEINDEX

VARIABLES句の変数のインデックス。このインデックスには、アラームが生成された時刻が含まれます。この時刻は、1970年1月1日午前0時からの秒数で表される整数(UNIX*時刻)になります。こうした変数がVARIABLES句に存在しない場合、VARIABLE句の変数の総数よりも大きなインデックスを使用します。

--#HELP

このインデックスには、ヘルプファイルの名前が含まれています。

--#HELPTAG

このインデックスには、HELPインデックスで指定されているヘルプファイルのHelp IDに対する参照が含まれています。

--#STATE

アラームが生成されたときのオブジェクトのデフォルトの状態。次のいずれかになります。

  • OPERATIONAL
  • NONOPERATIONAL
  • DEGRADED
  • UNKNOWN

この注釈が存在しない場合、状態はUNKNOWNになります。

トラップの注釈を追加する場合、次のルールに注意します。

  • 各注釈がコメントとして組み込まれるようにする必要があります。先頭に二重ハイフンが付けられた行全体がコメントとして処理されます。
  • 各注釈が個別の行になるよう設定する必要があります。
  • 注釈は、トラップの定義で説明されている順序で表示される必要があります。
  • すべての注釈は、DESCRIPTION句と::=句の間に挿入する必要があります。
  • STATEおよびSEVERITYの値は、MIBを最初にコンパイルしたときにアラームデータベースに書き込まれます。アラームテンプレートのSTATEおよびSEVERITYの値を変更する場合は、対応するMIBファイルでこれらの値を変更してから、MIB Compilerを使って再コンパイルを実行します。


トラップ定義の例

次の節では、注釈を追加する前と追加した後のSNMPトラップの定義を示します。


注釈を追加する前のトラップ定義の例

dupIPXNetAddr TRAP-TYPE

ENTERPRISE Novell NetWare-GA-alert-mib

VARIABLES{osName, osLoc, tiTrapTime, tiEventValue, tiEventSeverity, tiServer}

DESCRIPTION"Two servers use the same IPX internetwork address."

::=8


注釈を追加した後のトラップ定義の例

dupIPXNetAddr TRAP-TYPE

ENTERPRISE Novell NetWare-GA-alert-mib

VARIABLES{osName, osLoc, tiTrapTime, tiEventValue, tiEventSeverity, tiServer}

DESCRIPTION"Two servers use the same IPX internetwork address."

-- Trap annotations are as follows:

--#TYPE "Duplicate IPX address"

--#SUMMARY "%s at %s and %s are using the same IPX address"

--#ARGUMENTS {0,1,5}

--#SEVERITY CRITICAL

--#TIMEINDEX 2

--#HELP "MYHELP.HLP"

--#HELPTAG 60004

--#STATE DEGRADED

::=8


Novell ZENworks Server Managementにおける注釈付きトラップの表示

Novell ZENworks Server Managementが、トラップ定義のキーワードで示したdupIpxNetAddrトラップを、次の変数が設定された状態で受け取ったと仮定します。

  • osName = SJM-JACK
  • osLoc = JACK's CORNER
  • tiTrapTime = ~700000000
  • tiServer = SJM-TIM

トラップを表示するには、[Active Alarm]、[Alarm History]、または[Alarm Detail]ウィンドウを使用します。次に、この例の結果を示します。

Receive Time:03/04/99 09:15:45

Alarm Type:Duplicate IPX address

Summary:SJM-JACK at JACK's Corner and SJM-TIM are using the same IPX address

Severity:Severe

State:Degraded


SUMMARY文字列の書式設定

トラップ注釈内のSUMMARYキーワードは、アラーム概要に実際に表示される文字列を提供します。この文字列は、アラームが発生したときにNovell ZENworks Server Managementによって使用されます。

文字列内のプレースホルダは、Novell ZENworks Server Managementが文字列を表示する前に、トラップの実際のパラメータによって置換されます。各プレースホルダの書式設定文字列はパーセント記号(%)で始まります。そしてこの文字列は、確定された文字列のプレースホルダに代入されるパラメータの書式設定方法をNovell ZENworks Server Managementに通知します。

プレースフォルダの書式設定文字列は、ARGUMENTSキーワードで指定されているパラメータにより、順番に代入されます。ARGUMENTSキーワードは、VARIABLES句で指定された各トラップパラメータのインデックス(ゼロベース)を一覧表示します。このインデックスは、SUMMARY文字列に代入する順序で示されます。

Novell ZENworks Server Managementは、SUMMARY文字列に最大140文字を表示できます。こうした文字を使用して、該当するアラームについて最も関連性が高い情報を表示します。SUMMARY文字列が長くなりすぎるため、MIBファイルの行の長さを妥当な範囲に収めたい場合、複数の連続するSUMMARY注釈を挿入することができます。この場合、文字列は連結されます。たとえば、次の注釈は同じ文字列を生成します。

-#SUMMARY "%s at %s and %s are using the same"

-#SUMMARY "IPX address"

-#SUMMARY "%s at %s"

-#SUMMARY "and %s are"

-#SUMMARY "using the same IPX address"

次の表は、書式設定文字列とパラメータの種類を示します。

パラメータの種類 書式設定文字列 表示形式

BOOLEAN

%s

%d

TrueまたはFalse。

1または0。

INTEGER

%x

%d

%t

16進数。

10進数。

整数または日付と時刻(グリニッジ標準時刻)を表示します。整数の場合、1970年1月1日午前0時以降の秒数を表します。

OCTET STRING

%s

%m

%x

すべての制御文字を削除した状態でテキスト文字列を表示します。

ハイフンで区切られたMACアドレスとしてデータの最初の6バイトを表示します。たとえば、00-00-07-00-07。

16進数でオクテット文字列を表示します。たとえば、0000070007。

NULL

%d

%s

数値0を表示します。

文字列NULLを表示します。

OBJECT IDENTIFIER

%s

ドットで区切られた10進数の値を表示します。たとえば、1.3.6.5.4。

IP Address

%s

%x

ドットで区切られたIPアドレスを表示します。たとえば、13.56.56.56。

長い16進数の値を表示します。

BIT STRING

%s

各バイトを10進数として表示します。