レプリカ

ネットワークに複数のNDSサーバがある場合、ディレクトリのレプリカ(コピー)を複数保存しておくことができます。これにより、あるサーバやそのサーバに対するネットワークリンクが機能しなくなった場合でも、ユーザが残りのネットワークリソースにログインし、使用することができます。図 20を参照してください。レプリカの詳細な説明については、パーティションおよびレプリカの管理を参照してください。

図 20

NDSの障害対策として、レプリカを3つ保存しておくことをお勧めします(レプリカを保存するNDSサーバが3箇所あると想定した場合)。単独のサーバに、複数のパーティションのレプリカを保存することもできます。

レプリカサーバは、NDSレプリカのみを格納する専用サーバです。このタイプのサーバは、DSMASTERサーバとも呼ばれます。この環境設定は、多くの単一サーバリモートオフィスを使用する企業などでよく利用されます。レプリカサーバを使用すると、リモートオフィスの場所のパーティション用として追加のレプリカを格納することができます。

NDSのレプリケーションでは、サーバファイルシステムの障害対策は提供されません。NDSオブジェクトに関する情報のレプリカだけが作成されます。ファイルシステムの障害対策には、TTSTM(Transaction Tracking SystemTM)、ディスクのミラーリング/二重化、RAID、またはNRS(Novell Replication ServicesTM)を使用します。

バインダリサービスを提供するNetWareサーバでは、マスタレプリカ、または読み書き可能レプリカが必要になります。

ユーザがWAN経由でNDS情報に定期的にアクセスしている場合は、必要な情報を含んだレプリカをサーバに配置し、ユーザがローカルでアクセスできるようにすることで、アクセス時間とWANトラフィックを減らすことができます。

LANにおいても、ある程度は同じことが当てはまります。ネットワーク上の複数のサーバにレプリカを分散すると、情報は、通常、最も近くにある使用可能なサーバから取得されます。


レプリカのタイプ

NDSでは、図 21に示すレプリカのタイプがサポートされます。

図 21


マスタレプリカ

デフォルトでは、ネットワークの最初のNDSサーバが、マスタレプリカを保持します。マスタレプリカは、各パーティションに同時に1つだけ存在します。別のレプリカを作成すると、デフォルトで読み書き可能レプリカになります。パーティションの詳細な説明については、パーティションを参照してください。

マスタレプリカを保持しているサーバを1〜2日以上ダウンさせる場合は、読み書き可能レプリカのうち1つをマスタレプリカにすることができます。オリジナルのマスタレプリカは、自動的に読み書き可能レプリカになります。

ネットワーク上にマスタレプリカがない場合、NDSで新しいレプリカやパーティションの作成などの操作を行うことはできません。


読み書き可能レプリカ

NDSでは、読み書き可能レプリカおよびマスタレプリカのオブジェクト情報にアクセスし、変更することができます。すべての変更内容は、自動的に全レプリカに伝えられます。

WANリンクの通信速度が遅い場合やルータが使用中の場合など、ネットワークインフラストラクチャに遅延が起きてユーザへのNDSの反応が遅い場合は、必要なユーザの近くに読み書き可能レプリカを作成することができます。読み書き可能レプリカは、サーバにいくつでも作成できますが、レプリカが増えると、お互いに同期を取るためにトラフィックの量が増加します。


読み込み専用レプリカ

読み込み専用レプリカは、マスタレプリカと読み書き可能レプリカからの同期更新は受け入れますが、クライアントからの直接の変更は受け入れません。


フィルタ済み読み書き可能レプリカ

フィルタ済み読み書き可能レプリカには、フィルタ済みオブジェクトセットまたはオブジェクトクラスが、これらのオブジェクトのフィルタ済み属性セットおよび値とともに格納されます。このレプリカの内容は、ホストサーバのレプリケーションフィルタが指定するNDSオブジェクトおよびプロパティのタイプに制限されます。ユーザはレプリカの内容を読み取ったり、変更することができ、NDSは選択されたオブジェクト情報にアクセスしたり、変更することができます。選択された変更内容は、自動的に全レプリカに伝えられます。

フィルタ済みレプリカの場合、サーバごとにフィルタを1つだけ指定できます。つまり、あるサーバで定義されているフィルタは、そのサーバ上のすべてのフィルタ済みレプリカに適用されます。フィルタ済みレプリカは、サーバにいくつでも作成できますが、レプリカが増えると、同期を取るためのトラフィックの量が増加してしまいます。

詳細については、フィルタ済みレプリカを参照してください。


フィルタ済み読み込み専用レプリカ

フィルタ済み読み込み専用レプリカには、フィルタ済みオブジェクトセットまたはオブジェクトクラスが、これらのオブジェクトのフィルタ済み属性セットおよび値とともに格納されます。フィルタ済み読み込み専用レプリカは、マスタレプリカと読み書き可能レプリカからの同期更新は受け入れますが、クライアントからの直接の変更は受け入れません。ユーザはこのレプリカの内容を読み込むことができますが、変更はできません。このレプリカの内容は、ホストサーバのレプリケーションフィルタが指定するNDSオブジェクトおよびプロパティのタイプに制限されます。

詳細については、フィルタ済みレプリカを参照してください。


サブオーディネートリファレンスレプリカ

サブオーディネートリファレンスレプリカは、システム生成のレプリカで、マスタレプリカや読み書き可能レプリカのオブジェクトをすべて含んでいるわけではありません。したがって、サブオーディネートリファレンスレプリカは、障害対策を提供していません。サブオーディネートリファレンスレプリカは、NDSによるパーティションの境界を超えた名前の解決に必要な情報のみを格納するために生成される内部ポインタです。

サブオーディネートリファレンスレプリカを削除することはできません。不要になった時点で、NDSが自動的に削除します。サブオーディネートリファレンスレプリカは、ペアレントパーティションのレプリカを保持し、チャイルドパーティションのレプリカを保持していないサーバでのみ作成されます。

チャイルドパーティションのレプリカが、ペアレントのレプリカを保持するサーバにコピーされた場合、サブオーディネートリファレンスレプリカは自動的に削除されます。


フィルタ済みレプリカ

フィルタ済みレプリカには、フィルタ済みオブジェクトセットまたはオブジェクトクラスが、これらのオブジェクトのフィルタ済み属性セットおよび値とともに格納されます。たとえば、NDSツリーのさまざまなパーティション内のユーザオブジェクトのみを格納するフィルタ済みレプリカのセットを、1つのサーバ上に作成することができます。また、ユーザオブジェクトのデータ(名、姓、電話番号など)のサブセットのみを格納するレプリカを作成することもできます。

フィルタ済みレプリカを使用することで、1つのサーバ上にNDSデータのビューを構築することができます。そのために、フィルタ済みレプリカでは、スコープとフィルタを作成することができます。これによって、1つのNDSサーバに、ツリー内の数多くのパーティションからの、適切に定義されたデータセットを格納することが可能になります。

サーバのスコープとデータフィルタの説明はNDSに保管され、ConsoleOneのサーバオブジェクトを通して管理することができます。

1つ以上のフィルタ済みレプリカを格納するサーバが持つレプリケーションフィルタは1つだけです。そのため、そのサーバ上のすべてのフィルタ済みレプリカは、それぞれのパーティションからの情報の同じサブセットを格納します。フィルタ済みレプリカのマスタパーティションレプリカは、NDS eDirectory 8.5以降が稼動するNDSサーバに保管する必要があります。

フィルタ済みレプリカの使用は、次の効果をもたらします。

ローカルデータベースに保管されているデータをフィルタリングできるという特徴を別にすれば、フィルタ済みレプリカは通常のNDSレプリカと同じであり、必要なときはいつでも完全なレプリカに戻すことができます。フィルタ済みレプリカの設定と管理の詳細については、フィルタ済みレプリカの設定と管理を参照してください。